リハビリの知識:股関節屈筋と足底屈筋

名古屋のPT、ふっくんです。

 

先日、京都大学の建内宏重先生の講演を拝聴してきましたので

復習がてらアウトプット。

建内先生は臨床バイオメカニクスの第一人者というイメージで

勉強不足の自分でも名前を存じているすごいお方。

お話はまとまっていて非常にわかりやすかった。

他の話も聞きたい。

 

さて、変形性股関節症という病気があります。

先天的な股関節の形態異常など理由で股関節がすり減り、

変形・痛みを生じる病気です。

関節変形が進行し、疼痛が重度となると

人工関節全置換術(THA)という手術が適応となりますので

如何に股関節の負荷を減らし、進行を防ぐのかがリハビリの主な目的となります。

 

上半身の重さが骨盤・股関節から膝を介して足に伝わりますが、股関節には

歩行時には体重の2-3倍の負荷がかかります。

股関節としては大腿骨頭と臼蓋(骨盤)ができるだけ大きく接していると

衝撃を分散させることができ都合がいいわけです。

そのため、身体としては骨盤前傾し、

被覆(骨頭と臼蓋の接地面積)を多くしようとします。

この状態が長く続くと股関節は前面が固くなり、

伸展制限が生じたり、腰椎過伸展で腰痛を生じたりします。

(これは腰椎ー骨盤リズムとも言います。)

 

そのほか体を横へ倒すデュシャンヌ歩行をとることで

体重がかかった際に骨頭が上に滑るのを防ぎ、

骨頭―臼蓋にかかる合力を内方化させます。

この際、内転筋で骨盤傾斜をコントロールするため、

内転筋の過緊張状態の症例をよく見かけます。

 

ここで難しいのが、

デュシェンヌ歩行の改善や

痛みにも繋がりうる固くなった股関節前面や内転筋の固さを除去する

というのは

そもそもの問題でああった股関節への負荷を増してしまう可能性がある、

ということです。

このあたりのバランスを如何にとり、

全身の機能と股関節自体の機能を保つのかというのが

セラピストの腕の見せ所です。

 

さらに、

変形性股関節症の患者では

立脚中期以降の股関節屈曲パワーの低下が生じており、

この機能低下を足関節底屈で補っているとの話がありました。

 

この股関節屈曲と足関節底屈は相互に補完関係にあり、

足底屈を強めることで股関節の屈筋機能は発揮せずに済み、

股関節の保護につながります。

逆に足関節底屈をあえて使わないようにすることで

股関節機能の発揮を促すため、

THA手術後で股関節機能を高めていきたいという時に有用となります。

その他の身体部位との関連では胸椎の柔軟性があると

股関節負担は抑えてながら早く歩くことが可能との報告がありました。

 

ここまで歩行時の一歩の負荷について述べてきました。

そのほか、股関節の負荷にかかわる要素として

体重や身体活動量:歩数が影響してきます。

 

全身的な身体機能の維持のためには歩くなどの運動で体力を保つことが必要ですし、

体重減少するにも運動が必要となりますが、

その運動も股関節機能にとっては負担となるというジレンマが生じます。

ここでもやはりバランスを取ることが重要となります。

 

本日はここまで。

 

keyword(さらに学ぶべき項目):

変形性股関節症(1次・2次)

THAについて

歩行時の衝撃

デュシェンヌ歩行の力学と治療

傾斜立位での筋活動

目標活動量(目安の歩数)