慢性疼痛と薬物依存とコロナ。

名古屋の理学療法士・ふっくんです。

 

先日、久光製薬主催のオンラインパネルディスカッションを

聴講致しました。

非常に学び深いものであったため、

学びのための記録をさせていただきます。

 

テーマは

オピオイド治療における諸問題とその対策」

新型コロナウイルス感染症問題を踏まえて~

参加者:山口重樹先生(獨協医科大学・麻酔科)、

    加藤実先生(日本大学・麻酔科)

    成瀬暢也先生(埼玉県立精神医療センター・精神科)、

    松本俊彦先生

   (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神科)

 

慢性痛は、長引く痛みで、組織の損傷の通常の修復期間を超えて続く痛み(3ヵ月以上)で、中枢神経系、つまりは脳の機能変化や、心理・社会的要因による修飾の影響を受けます。

 

ケガによって痛いのではなく、

痛みそのものが病気として考える必要があります。

 

治療は

医師による薬物療法や、神経ブロックなどの麻酔、

理学療法士による運動療法がおこなわれますが、

心理・社会的要因が影響するため、

精神科医の診断・治療や公認心理士・臨床心理士による認知行動療法なども

含め多面的に行われます。

 

様々な要因が影響するため、

治療の目標は痛みゼロというより、痛みとうまく付き合うという点が

目標となることも多いです。

そのために必要なのが

痛みがあっても今ある活動を保つ、できる仕事をするといった活動量と運動、

社会的な交流・楽しみ、ポジティブなマインドセットなどと考えられます。

 

散歩やジムの運動で体力を向上させたり

趣味のカラオケや外食で気分転換を図ったり、

仕事を行いやりがいをもち、生活リズムを適切に保ったりといった点で

痛みとうまく付き合ってきた方が、

コロナ禍の状況にて、

活動量の低下で体力低下をきたし、

楽しみがなくなり、収入や感染の不安が増すことで、

ますます痛みが気になったり、さらに痛みを感じやすくなったりということが

生じている様子です。

 

一方の薬物依存症について(詳しくはないのですが・・)

「孤立の病」と言われ、

その背景に社会的要因が大きく影響しているとのこと。

例えば

仲間とのつながりを求め、薬物に手を出す。

→薬物へ溺れ、仲間が離れる。→孤独を紛らわせるためにさらに薬物に手を出す。

と言った悪循環があるそうです。

 

その治療の目標も

治癒ではなく回復として、

自助グループでの人のつながり、

人に頼り、心のうちを話せる安心感などが重要とのこと。

それがコロナ禍において

やはり自助グループの開催が減少し、

孤立感や経済的不安から再度薬物に手を出してしまう方が多いそうです。

 

コロナ禍によってもたらされた

従来の生活からの変化、

健康面や経済面での不安、

社会からの孤立、

そういった面が慢性疼痛、薬物依存症という

別々の分野においても

共通して悪影響を及ぼしていると知りました。

 

また、慢性痛、薬物依存症とも

 

患者の根底に、人間不信があり、わかってもらえないという医療不信が生じること。

 

病気と不安を抱える患者を支えるはずの医療者側ですら

治らない原因のわからない痛みや薬物依存症は特別な病気として避けてしまい、

頼るべき病院、信頼できる医療職と出会えないことなども

共通点として挙げられました。

 

その結果、適切に薬物療法がなされず、

不適切な鎮痛剤や精神安定剤の使用、過度なアルコールの摂取により、

薬物依存が広がる可能性があるともされています。

 

以上を踏まえ、パネラーの先生方は

我々医療職が

身体の痛みや、薬物依存の症状だけでなく、

患者の心の痛みや不安、孤独といった点を理解し支援に当たる必要を説き、

麻酔科・精神科、慢性疼痛と鎮痛剤や精神安定剤などの薬物依存に関し、

協力して患者の支援に当たる必要があると締めくくられました。

 

理学療法士は運動・基本的動作の専門家ですが、

しっかりと心理面や社会面にも目を向けていく必要を改めて感じました。

 

肝に銘じて日々患者さんの支援に臨みたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。